―第1巻―

親子3人「淀川源流」旅日記
〜桂川その4〜
コマドリ
   コマドリ

嵐山街並み

 山々が黄色や朱色に染まり始めた頃、嵯峨から亀岡方面へ。美しい紅葉の街道をトロッコで駆け抜けました。京都市内の街並みから一気に里山へタイムスリップ。亀岡では稲を刈り取ったあとの田園風景や自然景観に恵まれた由緒ある社寺がしっとりと迎えてくれました。


トロッコ列車
トロッコ列車
 今回は トロッコ嵯峨駅【A】 からスタート。この駅には使用済みの定期券やプリペイドカードで作られた遊歩道やミニ植物園があり、待ち時間を退屈することなく過ごせる。トロッコ列車は明るい配色を施した可愛い「ロマンチックトレイン嵯峨野」。全長7.3キロ、保津川渓谷を縫うように25分間走行する。途中、8カ所のトンネルを抜けるが、そのたびにシャッターチャンスがあり、乗っている者を飽きさせない。

 列車はすべて指定席。取材当日は平日にもかかわらず、立ち見客も多かった。のんびりと列車が走り出す。見所はガイドさながら車掌がマイクで説明してくれた。景色がよく見える大きな車窓、レトリックな趣のインテリア。宮沢賢治の銀河鉄道の夜を思わせる列車は、遠足の時にワクワク、ソワソワした子供の頃の記憶を思い起こさせる。しばらくすると、 保津川下り【B】 の舟が見下ろせた。こちらが手を振ると、船頭さんや乗船客たちがそれに応えて手を振ってくれる。 保津峡【C】 に差し掛かると、景色が一変。紅葉に包まれた渓谷美が広がる。眼下では深紅の衣装をまとったコマドリが谷を渡り、斜面に横たわるブナの倒木に留まる。あたかも一片の紅の葉が生を受け、遊ぶように舞っていると感じた。本来コマドリはもっと高い山間にいて、季節的にも9月までに見られる野鳥らしい。この辺りで目にしたのは、とても希な体験かも知れない。行程も半ばを過ぎる頃、トンネル内では酒呑童子に扮したスタッフが現れる。至れり尽くせり、とても楽しい。しかし、その姿に娘は固まる。はじめは機嫌良く車窓を眺めていたのに、酒呑童子に頭をなでられると「こわい!もう降りたい〜」と半泣きになっていた。
保津峡の紅葉
保津峡の紅葉(小倉山、山頂付近より)

 終点のトロッコ亀岡駅からJR馬堀駅まで約10分。タンポポやセンダングサが咲く線路づたいを歩きながら、パノラマで里山風景を堪能した。そして、JR馬堀駅からJR亀岡駅へ。駅前には明智光秀公ゆかりの 亀山城跡【D】 がある。まるで樹木におおわれた丘のよう。僅かに残っている石垣の一部が当時の面影をうっすらと感じさせる。現在は大本教の本部が置かれ、中には大きな植物園がある。園長に見学を申し出ると快く承諾してくれた。北海道から奄美大島まで国内の珍しい植物がいっぱいだ。平日の午後だからか、見学者は誰もいない。ヒヨドリの鳴き声だけが響く中、家族だけでゆっくりと散策できた。
 次なる目的地は駅の反対側。バスやタクシーが行き来し、賑わっている目抜き通りとは一変した風景。里山と田園が広がる懐かしい雰囲気の中をバスで10分ほど行くと、天平13年、聖武天皇の勅願により建てられた 丹波国分寺跡【E】 に到着。ここは国の史跡であり、現在は田園の中に山門・本堂・鐘楼がひっそりと佇んでいる。境内の隅にある17個の礎石、本尊である薬師如来像が当時の規模を伝えてくれる。また、この寺跡の近くには桂川支流の 七谷川【F】 がある。ここは知る人ぞ知る桜の名所。春になると近郊から花見客が大勢押し寄せるとか。桜花が満開に咲き誇る様は、さぞ見事だろう。早春の季節に、今度はお弁当でも持参して、ぜひ観光してみたいものだ。  天候に恵まれた秋の一日。家族揃って、のんびりと過ごした。日本らしい秋の景色がノスタルジックな感情を引き出す、そんなひとときであった。

保津川 *取材/11月8日(木)

*小村家・プロフィール/父の一也はプランナー兼イラストレーター。母の郁慧はコピーライター。そして一人娘の東洋。親子3人、仲良く見聞しています。

    散歩地図



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