淀川河川公園と私
川は子どもを育てる、動植物にも大切な環境。

 小学1年生までの間に川で遊んだ、という記憶が私にはない。しかし、小学2、3年生の2年間、疎開した大分県の田舎には近くに川が2本あったので、川と魚がすぐ好きになり、洪水も体験した。中学、高校生時代は、私は宝塚に住んでいたから、川といえば武庫川、夏には毎日のように川で遊んだ。
 あの頃、私がよく出かけた武庫川の行動圏は宝塚から上流側に道場までの間で、中流域の魚類を楽しんだ。この地域では開発がまだほとんど行われていなかったから、現在の住宅地域の大部分が山地や農地だった。したがって、昆虫や野鳥もごく身近だった。
 一方、淀川は、阪急宝塚線の車窓から見える、とらえどころのない大きな川であった。「とてつもなく大きな鯉が釣り上げられた」という話や記事に驚いたのをおぼえている。

 私の体験からすると、小・中・高校生ぐらいの年齢期に川に親しむことは、その人の自然観の形成にたいへん影響があると思う。そして、小・中学生ぐらいの人が川に親しむ環境としては、大きな川の下流域より中流や上流域の方が適している。
 このように考えたとしても、桂・木津・宇治の三川合流域以下の大河淀川とその河川敷の公園は大都市大阪と近域の多くの人たちにとって重要な場所であることには変わりはない。

 この30年間、私は主に鳥類の研究・調査をしているので、川とのつきあいはそれまでと少し異なっている。川は、もともと、鳥類のほか様々な生物の生息環境としても大切である。『淀川河川公園利用マップ』には、阪急線が淀川をこえる所のすぐ上流側左岸に「ヨシ群落」、「冬期にカモ類多い」と記されている。確かにこの区域はカモ類のよく集まる水域で、ここのカモ類を見て冬を感じる人は少なくないだろう。
 淀川河川公園は、立派な球技グランド等施設地区から野草地区まで多様に公園化され、よく利用されている。いつも狭い場所でしか遊べない都市の子ども達が、この広い公園で走りまわっているのは本当にいいことだ。

 1990年に建設省河川局が『多自然型川づくり』を打ち出した。これは、一般人にはあまり知られていないが、画期的なことだと私は思う。この施策の思想に照らして、最後に、鳥類研究者としての淀川河川公園についての希望を2つだけ述べさせてもらう。

1.これだけ広い河川敷があり、管理体制も整っているのだから、下流域に数10haのコアジサシの集団営巣地を造ってほしい。近年、コアジサシの集団営巣地は開発行為によって世界的に急減し、生息数の減少が著しい。日本では夏鳥として繁殖する渡り鳥である。

2.野鳥生息保護地区を設けることは、もちろん望ましいが、保護地区ではなくても、城北ワンド区に新設された実験ワンドのような、鳥類の生息環境としても適している自然要素が多い岸辺の環境を流域の所々に造ってほしい。


 これら2つの地域の造成方法と管理が良ければ、淀川をさらに良い鳥類の生息地にできるだろう。
安部 直哉
野鳥の話をする筆者
  野鳥の話をする筆者

ナンバー30 安部 直哉
あべなおや。昭和13年1月9日東京生まれ。
大学卒業後7年間は神奈川県水産課の技師として勤務。
以後、主に鳥類の生態の研究、調査を続けている。

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