葉や茎に細く密生する毛。毛の一本一本に水滴でも付いていようものなら、光り輝くその美しさにきっと誰でも夢中になって見とれてしまう。春の野草は、枯れ野の中に新しく現れた命の輝き。花が咲いていれば最高だが、まだであったとしても、遠く近くの新芽や新葉の艶やかさに注目すれば、不思議と解放感がみなぎってくる。鮮やかに化身した春の野は、和紙にしみこむ絵模様のように精神世界をも満足させてくれるだろう。
 ペンペングサの花は、下から上へ順番に咲いていく。だから、てっぺんには蕾がかたまり、途中に白い花、そして下の方には三角形の実ができてくる。「花も実もある草」と言うわけだ。ワスレナグサをうんと小さくした「キュウリグサ」。葉を摘んで嗅ぐと、キュウリを思わせる青臭さが鼻を突く。キュウリモミグサとかママゴトグサなどと呼ばれる地方名はほのかな懐かしさを誘う。これは先の方は蕾ばかり。それがきれいに渦巻きになっているのだ。まだ枯れ草の残る草むらに屈み込んで、草花にうんと近づいてゆっくり眺められるのも、虫や蛇の心配のないこの時期だ。
(新連載の解説は、「淀川の自然を楽しむ会」の指導で親しまれる有馬忠雄先生が執筆。)


 (1)カサスゲ
淀川の水辺といえばカサスゲ。最近あまり見かけられなくなった。生育に適した水辺が少なくなったからだ。名の由来は、笠を作るスゲらしい。ミノスゲという地方名がそれを物語っている。今、それは私達の生活用具から遠のき、関心を持たなくなった文化の変貌を感じさせる。
 (2)カンサイタンポポ
タンポポのこと。外国からやってきたセイヨウタンポポの分布域調査が行われて以来、関西地方のタンポポとわざわざ断わるようになった。ウサギノチチと呼ぶ地方もある。淀川では堤防の肩等でもともと見られたものだが、河川公園の整備に伴い、淀川全域に広く盛んな生育を見るようになった。
 (3)コバンソウ
名前のとおり、小判がいっぱいぶら下がっているように見える外国産の草。黄金色に色づき風に揺れる姿は、何とも愛らしくわずかに音が聞こえてくるようだ。俵麦とか大揺草などの別名は、観賞用に輸入した明治時代の愛好家達の気心を伝えてくれる。淀川ではまだ少ない。
 (4)ノアザミ
春から夏にかけて見られるアザミがこれである。他のアザミ類は秋に咲く。花のてっぺんに雄蕊が何本も突きだし、その先をそっと撫でると白い花粉が噴き出すようにでる。虫が花の上を歩くと、体中に花粉が一杯。マユツクリバナとかマユハケなどとも呼ばれ、花の姿をうまく表現している。
 (5)ノイバラ
文字どおり、野のバラである。白い花が可愛く、満開時には辺りに香りが漂う。成長が早く、実は淀川の草むらを横切るときの困り者。とげと共に足をしっかり捉えて離さない。秋の赤い実は甘みがあるが、種が多く食べにくい。実を乾燥したものは利尿や便秘の漢方薬として使われる。
 (6)ヒメオドリコソウ
淀川では三川合流点・背割堤地区の宇治川に面した草むらにオドリコソウという多年草が群生している。これは、対生した葉の付け根に大型の花を数個付け、まるでステージに舞う踊り子を思わせる。その仲間で、小型のものが姫踊子草。明治年間に外国からやってきた。


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